2005年 10月 16日
人間の寿命は今後20年で1000歳以上に
人間の寿命は今後20年で1000歳以上に

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【Slate】昨年12月、世界をある衝撃的なニュースが駆け巡った。「人間の寿命は今後20年で1000歳以上に伸びる」そう題打たれたその報道は、BBC、CNN、またMITプレスなど世界の名だたる報道局や科学雑誌が取り上げ、彼らは一斉にその説の中心に立つ異形の男 - オーブリー・デ・グレイ氏(写真)に取材を求めた。そして、グレイ氏の名は、我々人類の不老不死さえ予期させるその衝撃的な新説と共に、瞬く間に世界中に轟いたのである。しかし博士の説に衝撃を受けたのは非科学者たちだけではない。それは、これまで長らく忘れさられていた、あるいは無視され続けた謎 - そもそも我々は何故死ぬのか? - そうした根源的な問いを、改めて科学者らに投げかけるものとなったのである。

グレイ氏は数年前にケンブリッジ大学にて生物学博士号を取得し、現在はそのまま同大学の遺伝学研究所に勤務している。そしてグレイ氏は自身の研究から、今後20年以内に、自説に基づいた科学的なブレークスルーが達成され、人間の寿命は現在では到底信じ得ない長さにまで飛躍すると発表し、世間を驚かせた。そしてその後、氏はエイジング(老化)に関する会議を主宰し、レジュベネイション・リサーチ(若返り研究)なる機関紙を発行して、その研究活動を着実に広めている。

更に氏はマウスの延命を競うメトセラ・マウス・コンペティション(メトセラとは聖書に記された969歳まで生きたとされるノアの祖父に由来する)なる大会を主催、先週には遺伝学研究の権威にしてゲノム研究企業のCEOも務めるウィリアム・ハセルティン氏も参加し、氏の寄付によって大会賞金はいまや 100万ドルを超えるものとなっている。

このメトセラ・マウス・コンペは民間企業の宇宙旅行実現を競い合うXプライズをそのモデルとし、研究者らにネズミの延命を行わせて、その寿命を競いあうという大会である。そして昨年11月には初めての受賞式が行われたが、受賞者はネズミのカロリー摂取を制限することで、遺伝子が変化し、寿命が延びるだけでなく、老化そのものを防止するという効果を発見したという。(またこれと同様の実験成果はその後、今年3月にもイギリスで確認されている。詳しくは 記事下部の参考を参照)




しかしこれら余りにも常識から外れた研究は、現在の我々にとって欺瞞にさえ思えることは事実である。これら一連の不老不死研究を続け、世界から注目を集め続けるグレイ氏とは、一体いかなる人物なのだろうか。一部メディアが華々しく報じる通り、彼は彗星の如く現れた稀代の天才科学者なのか、はたまた一見して怪しげなその風貌の通り、稀代のペテン師に過ぎないのだろうか。


ヘイフリック限界

< 中略 >

これまでグレイ氏が唱えた説は、一見するならば非常にもっともらしく見える。その主張とは大まかに次のようなものである。

 人間に死をもたらす老化とは、我々の細胞内外における一連の機械的な出来事にすぎない。たとえ今後、我々が全ての病気に打ち勝つ方法を見つけたとしても、例えば120歳も生きれば人はやがて死ぬ。何故なら人間の細胞は分裂を繰り返すことで再生するが、ある定められた回数それを繰り返したのち、そうした活動を止めてしまうからである。これが1961年、カリフォルニア大学の研究者レオナルド・ヘイフリック博士が発見した"ヘイフリック限界"と呼ばれる現象である。またそのほかにも我々の細胞は老化に関連した問題 - 老廃物質とその蓄積といった問題が影響し、正常な細胞はその分裂寿命を迎えて活動を止めてしまう(しかし例えば、癌細胞は、無限の分裂能を持ち、その分裂活動を決して止めることはない)。

これは老化の基本原理である。そして現在、グレイ氏は人間の死 - 老化に決定的役割を果たすプロセスを7つに絞込み、研究を進めているという。そして氏は更に、これまで遺伝学者らが行ってきたような"のらりくらりとした研究"を止め、その7つの問題に照準を定めるならば、この老化と言う"止まらぬ機関車"の進行を必ず食い止めることが可能になる、と力説するのである。そしてまた博士は自説を他の研究者に積極的に呼びかけ、その機関車のアクセルを協力してへし折るべく、研究を続けている。


プログラマーから生物学者へ

< 中略 >

そしてある日、グレイ氏は悟ったのである。"これまでの研究者たちは、皆、最も重要な問題を見落としている"

「これら老年学の研究者たちは皆、各々が勝手にに研究を進めているだけで、他の分野と協力しようとしている人は本当にわずかだったんです。これらの研究分野は特定の科学者らによって独占され、彼ら自身も他とは隔絶した状態で、孤立的な研究をしているばかりだったんです。そして私は、自分がこの領域に貢献できる部分は、まだ大きく残されていると感じたわけです。」氏は後のインタビューに答えてそう語っている。

そうしてグレイ氏が満を持して世に出した生物学論文は、大きな反響を呼んだ。1997年に発表されたその論文は、"ミトコンドリア(細胞内のエネルギー生産の場)が何故、老化と共に悪化するか"という問題を、これまで既存の説とは全く異なる視点から論じた画期的なものだったのである。そしてケンブリッジ大学はその研究功績を認め、論文を学会誌に掲載すると共に、それまで何ら生物学の正規教育を受けたことのないグレイ氏に対し、生物学の博士号を授与したのだ。

 しかし今日、ケンブリッジ大学のウェブサイトを見る限りでは、グレイ氏は依然、"コンピューター補助係"として研究室に勤務しているとされている。しかしグレイ氏によれば、現在では週15時間ほどショウジョウバエ研究のデータベース管理者として働きながら、残りの時間を使って独自の抗老化技術研究を行っていると話している。

 確かにこうした研究者の在り方は、現在必ずしも珍しいものではない。グレイ氏のようなハッカー上がりの異端的生物学者による非専門研究領域への貢献という例は、現在ではしばしば見られ、また彼らだけが持ちうる横断的な知識が、結果として専門分野の先駆を成すという実例は多いのである。

 < 中略 >

 先のヘイフリック限界の発見者、レオナルド・ヘイフリック博士は電子メールにおけるインタビューで、グレイ氏のことを次のように語っている。「グレイ氏は確かに、この分野に全く新しい貢献をもたらしました。生物学の正規教育も受けていないにも関わらず、彼が才能ある遺伝学者であることには異論ありません。しかし私自身の見解を述べさせてもらえば、彼の研究 - 今後20年で寿命が飛躍的に延びる - は誤った方向に向かっていると思います。それは人類始まって以来、いつだって思い描かれてきたことです!」

 また他の研究者らも、グレイ氏の理論、そしてその支持者たちに対しては批判的である。あたかも不老不死を唱える預言者のごときグレイ氏、そしてそれを熱狂する支持者たちが、彼の説を既に科学的事実であると確信することに危惧しているという。例えば依然、マウス・コンペで最優秀賞を受賞した研究 - カロリー制限に基づくネズミの延命と若返りに成功した研究 - は、多くの一時的なダイエット支持者を生み、本の売れ行きに貢献した。しかしそれらの研究において、ネズミに対しては確かに効果があることは証明されたが、まだ人間に対して臨床試験が行われた訳ではないのである。


 異端の男

 ではやはり、グレイ氏は端から門外漢のペテン師だったのだろうか?今回の取材では、他にも、この分野における三人のトップ研究者らが名を伏せた上で取材に答えた。彼らは基本的にはグレイ氏の理論を決して是認できるものではない、としながらも、しかしまた決して彼の理論を非難しきれるものではない、と一様に語っている。また米イリノイ大学の研究者ジェイ・オルシャンスキー博士は先のMITテクノロジー・レビュー誌の取材に答え、次のように語っている。「我々は彼を必要としています。彼は我々に真っ向から挑戦状を叩きつけてきたわけですが、彼の理論が我々の思考を大きく広げるものであったことは、間違いがありません。」

またヘイフリック博士もグレイ氏の活動を端から否定しているわけではない。「現在、国の老化研究に関する予算の多くがアルツハイマー病の研究に割り当てられ、あらゆる病気が治せるようになったとしても、我々は何故死に続けるのか、その大きな問題の研究には全く予算が割り当てられていないのが実情です。グレイ氏の主催するマウス・コンペは、人間の老化問題に対して、皆が大きな興味を抱くきっかけになると思います。それは例えばXプライズがNASAの失敗(コロンビア号の爆発墜落)を乗り越えて、民間が宇宙事業へと乗り出す大きな原動力となったことと同じです。そしてヴァージン・ギャラクティックは NASAの事故から二年後、その研究に本格的に乗り出したわけわけですから。」
< 中略 >

【参考1:Guardian】ネイチャー誌が伝えるところによれば、このほど行われた実験において、ネズミに断食を行わせたところ、新たに発動する未知の遺伝子の機能によって、寿命が延び、老化が防止されることが確認されたという。研究を行っている英ジョン・ホプキンス医科大学教授Pere Puigserver博士らの発表によれば、実験でマウスに断食を行わせたところ、血中におけるブドウ酸の量を調整する老化に関係した遺伝子が、新たに機能し始めることが確認されたと話している。

「カロリー制限がブドウ糖の代謝を引き起こし、寿命を引き伸ばすんです。しかしながら、現在ではまだ、老化防止にどのようにこの代謝が関わっているのかは明らかではありません。」

また博士らの行っている研究では、SIRT1と呼ばれる動物性タンパクが断食において活発化することが確認され、これは食事を制限した際に老化防止機能を発揮する酵母や寄生虫に似た機能を持つとしている。

そして今回の実験の結果、断食を行わせた際、ネズミの肝臓内にてこのSIRT1の生産を引き起こされ、連鎖反応として血中におけるブドウ糖を生産することが明らかになったという。そしてこのブドウ糖の効果により、動物が延命し、また老化が防止されていることが明らかになったと研究者は話している。

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by sadomago | 2005-10-16 06:50 | 小食健康法


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