2006年 10月 12日
シュタイナー死者の書 2006年8月10日 第1刷発行 著者:ルドルフ・シュタイナー(1914年ウィーン連続講義) 訳者:高橋 巌 筑摩書房 筑摩学芸文庫 本書は1989年9月30日 イザラ書房から刊行された『ルドルフ・シュタイナー選集』第十巻『死者の生活を改題・改訂したものです。』 第2部第一講 P95~ さて、私たちは今、内なるものではなく、外なるものを振り返っています。なぜなら私たちが肉体の中にいる限りでの外なるものは、内なるものであり、肉体の中にいるときの内なるものは体の外にいる霊魂にとっては、外なるものなのですから。今、この外なる自分自身を振り返りますと、私たちにはこの肉体の成長と衰退が見えてきます。それは自分にとってのひとつの必然として見えてきます。物質界における自分の身体が成長し、そして衰退するのです。そしてこの肉体に成長を促したり、それを衰退させたりしているのが霊的存在なのだということを認め、そして物質界でのこの成長と衰退が肉体のどの部分でふたたび結晶化されるのかを知るようになります。この成長と衰退は、人間の骨格系と結びついているのです。人体には骨格が組み込まれているということの中に、人間が物質界で成長を遂げるときの形式が語られています。骨格系が人体内に形成されるときの形式によって、人間存在がどのように成長し衰退するかが決められているのです。自然が物質存在としての私たちの身体の物質的性質を硬化させて、骨格組織を生じさせるように働いていなかったとすれば、私たちの今日の姿は存在しなかったでしょう。こう言うと奇妙に聞こえるかもしれませんが、太陽存在として生きている支配的宇宙霊たちを、私たちは骨格系として敬うことができるのです。私たちは骨格系という人体の基礎設計が宇宙秩序の中にどのように描きこまれたのか、そして人体の諸器官どのようにそこにいわば取り付けられたのかを認識するようになるのです。 このように霊界での外界となるものの体験は、死の象徴である骨格の直観で終わります。なぜならこの見霊体験を通して、私たちは最後に、霊界がなぜ物質界という象徴を産み出したのかを認識するようになるのですから。もともと霊界の一員であり、身体を離脱することでこの霊界にふたたび参入する私たちは、身体を離脱した今、私たちの本性を知るようになります。そしてこの第四段階において、次のような認識に達するのです。――「 われわれが地上界で行動し、意志を発揮するとき、われわれにそうさせているのは、地上界では無意識的に働く内なる力なのだ。われわれが前へ進もうとして、骨格のメカニズムを使用するとき、その歩行の中には宇宙的なこの内なる力が働いている 」。身体離脱の第四段階を体験するとき、初めて本当に私たちはこの宇宙的な力の中にいるのです。 皆さん、どうぞ考えてください。私たちが散歩するとき、骨格のメカニズムの助けを借りて、肢体を前進運動させます。私たちがただ散歩するとき、骨格のメカニズムの助けを借りて、肢体を全身運動させます。私たちはただ散歩の楽しみのためにそうしている、と考えていますが、このことを可能にし、骨格のメカニズムを使用できるためには、宇宙全体の存在が必要であり、そしてその宇宙全体は神霊の力に貫かれていなければなりません。そして私たちは、この第四段階に身を置くときにはじめて、この神霊の力について知ることができるのです。私たちの歩みの一歩一歩の中に、宇宙の神霊が共に働いています。私たちは自分の足を前へ一歩進めるのは自分である、と信じていますが、私たちが霊的宇宙、神的世界の中に生きているのでなかったなら、私たちはそうすることができなかったでしょう。 地上界を生きる私たちは、眼を周囲に向けます。そして鉱物、植物、動物を見、山、河、海、湖、雲を見、星々、太陽、月を見ます。私たちがこのようにして外界に見出すものはすべて、それぞれ自分の内部を持っているのです。そして私たちが先に述べた仕方で身体を離脱しますと、私たち自身がこれらのものの内部へ入っていきます。そしてその内部に生きる私たちには、光り輝く太陽、輝く星々、山、河、海、湖、霊等々の内なる霊的なものが、運動を可能にする私たちの骨格のメカニズムの中にもすべて生きて働いているということがわかり、そして先に述べた筋肉の問題がもっとよく理解できるようになるのです。私たちの意志が骨格のメカニズムと密接な関係があるように、私たちの感情は筋肉と密接な関係にあるということがです。筋肉系は私たちの感情組織の象徴的な表現なのです。私たちの筋肉は骨格のメカニズムを動かすために、伸びたり縮んだりできるように作られていますが、そのためには私たちがアストラル体の中で知ることができる惑星系の存在が必要なのです。私たちの筋肉系の中には惑星系全体が存在しており、私たちの骨格系の中には宇宙全体が存在しているのです。思考や感覚的知覚についても、これからの講義の中で取り上げるつもりです。 霊的認識はこのような事柄を教えます。この霊的認識は私たちに思考内容と理念を与えるだけでなく、私たちの魂全体を変化させる力をも与えてくれるのです。私たちはそれによって、本当に自分自身を認識するようになり、感情の中でも思考の中でも別人のようになりうるのです。以上に述べた見霊意識の経験を皆さんの心に作用させ、それを魂の基本的な生活感情になるまでに濃縮させるように努めて下さい。見霊的な研究が教えるこのような知識によって、私たちの内的生活感情を燃え上がらせてください。 一見、もっとも日常的なものに思えるものにも、私の神秘劇『魂の試練』の冒頭でカペシウスとベネディクトゥスの口から語られていた言葉が当てはまるのです。すなわち、人間の中には神的・霊的な存在たちの定めた諸目標が、いわば集中して存在しているのです。神的・霊的な存在たちがいくつも宇宙紀を経て考え続けてきたものが、人間本性の中へ流れ込んでいるのです。そして今、私たちはそれをひとつの生活感情にまで濃縮させようと思うのです。私たちは今、人間本性をこれまでとはまったく異なった仕方で見ます。これまでとは異なり、それが神的宇宙によって貫かれているのを知っているからです。そしてこの意識は燃え上がり、力を強め、そして内なる感情を込めて語ります。――「 人間を理解しようとするのなら、次のことを学ばねばならない。人間はそのすべてが、神的・霊的なものから生じたのだ 」。 私たちは一人ひとりの人間の中で、感情が筋肉活動の中に流れているのを見ます。そして神的・霊的なもの、宇宙的なものが骨の中に流れているのを見ます。そして全宇宙が筋肉の伸び縮みの中に生きているのです。このことを私たちが徹底して考え、感じるとき、「 そうだ、人間は神的存在から生まれたのだ 」とはっきり悟らざるをえないのです。 Vol.1 へ Vol.3 へ 関連記事 肉体/エーテル体接触面
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