2006年 06月 08日
はるあきら 安倍清明との対話 著者:七浜 凪 発行:ナチュラルスピリット 2005年4月5日初版発行 祈 前回の続き P156~ こういう経験が初めての妹は、とても真剣に考えていた。家族が周りにいる中、自分が集中できるときはいつなのか、自分の心の状態が完璧でないのに祈りをささげてよいものか、かつてやったことの無いこの試みをその場でちゃんとできるのか。それらを考えに考え、条件がなかなかクリアにならないことに落胆し、決行日と時間を決め兼ねていた。私は妹のその心境がよくわかった。最上のエネルギーを送受信したい。彼女はそう考えていたに違いない。しかし、現状は緊迫している。日々悪化していく義弟の状態を食い止めねば、何日か過ぎた頃、友人Aがいきなり言った。 「今日はどうだろう。今日が良い気がする。妹さんに聞いてみて」 妹は、「私は何もできないけれど、それでもいいのだろうか」 と少し不安げに言葉に発する。 私は 「心配ない」 と答えた。 時刻は夜の10時と決まった。参加するのは友人Aと私、それから私の夫の3人だ。私の夫はインドネシア人でバリ島の出身だ。バリ島は 「神々の島」 と呼ばれる場所。村人たちは信仰心が厚く、常日頃から寺に通い、神と密着した暮らしをしている。私は、「神」についてはよくわからないが、バリ島に住み、実際にあの島が特有のバイブレーションを放つ土地であることを実感した。そんなわけだから、私の夫もある意味初心者ではない。つまり、今回やろうとしている試みで、力になってくれることはまちがいないであろうと思われた。 事前に二つだけ共通の取り決めをした。遠隔で、しかもバラバラの場所で行うので、フィールドを作りやすいように、それぞれが一つのサークル上に座っているところをイメージすること。それから、統一した 「青」 の色のエネルギー (3人が思い浮かべ易いという理由から) を受け取り、流すこと。 私と夫は夜10時になる10分ほど前から、暗くした部屋に香を焚き各々瞑想状態に入って行った。私はかなり早くに集中でき、自分の中からGO!サインが着ていたので、ちょうどよい頃合になった時に開始した。自分の姿が客観的に見えるようなビジョンが現れ、頭上に広がる宇宙が感じられる。準備のできた夫や友人Aがサークル (三角形) 上に存在を置いているのがなぜかわかった。私は宇宙に向かってたのんだ。 「どうか私に、義弟を助けるための青色のエネルギーを分けてください。」 すると、ウソのように、空から一筋の青色のエネルギーが私の頭に向けてしゅるしゅると入って来た。そのことに唖然としながらも、私はエネルギーが頭から下に向かって体を通るのを感じ、一旦留めた。このエネルギーを義弟に向けて飛ばすのだと思った時、今度は病院にいる義弟の様子がありありと見えてきた。暗く、機械の音が微かに響く。体を通る点滴の管。力なく横たわる義弟。私の意識はスキャンするように義弟の体の中を垣間見る。弾力の無い、色の悪い内臓。これは膵臓だろうか。その周りにあるただれた内臓。所々白っぽく変色しているように見える。 混濁した血。「内臓が熱い。濁ったものが体を回って細胞が悲鳴を上げている」という気がした。ここだ! 私の中から、青いエネルギーが一気に空間を越えて義弟のもとへ流れ込む。ほかの2人もいい具合に集中できているようだ。 私は、エネルギーを送りながら、病気に蝕まれたこれらの内臓が青のエネルギーをあてられ、次第に元の状態に蘇っていく様子を思い描いていた。弱った膵臓はみるみる力を取り戻し、正常に機能し始める。周りの内臓からは爛れが引き、さらに強い新しい膜で覆われていく。それらを循環していた濁った血液は、いつの間にか不純物の無い美しい血に変わり、すべてを一掃すべく体中を駆け巡る。義弟の体がすっぽりと青のエネルギーで包まれる。痛みに歪んでいた表情が少しずつ安らかになって行く。 「驚くべき回復力だ。奇跡としか言いようがない」 誰が言っているのかよくわからなかったが、そんな声が聞こえる。 夢から覚めるように瞑想状態から素に戻り、同じようにエネルギーを送り終えたであろう夫と目を合わせる。私は、今の自分の状態がとても澄んでいるなぁと思った。 夫も同じだった。そして、エネルギーは確かに届き、祈りは送られたと確信した。根拠などはなかったが、感じるものは止められなかった。瞑想状態で観た数々のビジョンは私にしてはかなりはっきりしたもので自分がそこにあるかのようにリアルであった。貴重な経験をした。祈りが届くというそのプロセスを、目に見える形ではきりと体感した稀に見る経験だ。エネルギーを分けてくれた宇宙にも、こういった場を与えてくれた義弟にも、力を貸してくれた友人Aと夫にも、心から感謝したい気持ちでいっぱいだった。ああ、義弟は良くなる。妹も楽になる。そう思った。 終わった後、友人Aからメールが来ていた。 「良いエネルギーが送れましたね。あなたは10時少し前から準備ができていたようでした。うまいもんです。ちゃんとエネルギーが入って来ていたし、送れていました。だんな様も集中していましたね。一番最初に瞑想状態からぬけたのはだんな様だった気がします。私は、義弟さんの内臓の様子がよく見えました。エネルギーを受けて良くなっていく様子も見えました。エネルギーは届きましたね。義弟さんはきっと良くなりますね。貴重な経験をさせてもらってどうもありがとう」 友人Aは私や夫と全く別の場所にいて、これらを感じ取っていた。。メールを読んでいて、鳥肌が立った。遠く離れた場所で、友人Aも私も、同じものを見、感じていたようだ。夫は瞑想後、自分にはこういう青いエネルギーが見え、とても集中しやすく送り易かったと言って、青のエネルギーの絵を描いてみせてくれた。花火のようにはじけて飛ぶ神々しいエネルギーの絵だった。 次の日、妹から電話が来た。 「私は、自分が納得の行くタイミングをずっとまっていたのだけど、なかなかそんな時間はなかったんだ。昨日のことも、うちの生活パターンでは、夜10時では子供たちが起きていて騒ぐし、お母さんもいるし、テレビはついてるしで、とても集中できる状態でないことも前からわかってた。だから、ほんとは自分も参加したいと思ってたけど、心の準備ができなかった。でも、でもね、昨日のその時間、どういうわけか子供たちもお母さんも早くに寝てしまって、夜の10時前から、ぽっかりと時間が空いたんだ。それで、途中からでも参加しようと思ってがんばったけど、いろんなことを考えちゃって集中できなくて、青っていう色さえイメージできなくて。 『うわぁダメだぁ』 っってあきらめかけた時、いやぁびっくりしよ。私の頭の上を、微妙に色が違う青の光の線みたいのが、シューシューって次々に飛んで行ったんだよ。そういうのが実際に見えたのも生まれて初めてですごく驚いたのだけど、なんかね、本当は私がしなくちゃならないことだったにに迷っているうちにできなくて、その代わりこうやってみんなが力を合わせてエネルギーを送ってくれてる、良くなるように祈ってくれてるって思ったらね、わたしゃ、感動してしまったよ。 ありがとう! って気持ちだった。 びっくりするのがね、その同じ時、どういうわけか偶然に、私の友達や知り合いとかが、うちのだんながよくなるようにって祈ってたっていうんだよ。 お守りをポストに置いていってくれた人までいてね。 本当にありがたかった」 妹は神妙な様子で言って、ふうっと大きく一息ついた。 それからの義弟の状態は、まるで 「おとぎばなし」 のようだった。 入院して3週間たった義弟を見て、同じ棟の患者さんたちはぎょっとするのだそうだ。なにしろICUで体中に管を巡らせ、 「透析」 という最終手段を施し、うなだれて手足を動かすこともままならなかった義弟は、今や、膵臓そのものの点滴も外れ、てくてくと自分の足で病院内を歩き回っているのだから。 「生きてこの病棟を出られるかが問題」 とまで告げられ、妻に覚悟をさせながらも、彼は絶望の淵から蘇った。恐れていた数々のリバウンドは一つも起こらなかった。痛みはなくなり、膵臓の回復たるや、医者も驚くものだったそうだ。無理しがちな義弟を良く知る主治医は、2日目の入院ということもあって、大事に大事を重ねて慎重に経過を見ており、「早く出たい」 と騒ぐ義弟になかなか退院の許可は出さないという。 妹は心底安心した声で、 「本当に良かったよ。私は最初、だんなが死んだらどうしようって目の前が真っ暗になったんだけど。今、どんどん良くなって減らず口を叩くだんなにムッと来るくらい、普通の感情と生活があるんだもん。お姉ちゃん、祈りのエネルギーは届いたよ。先生がね、言ってた。 『こんな悪い状態で入院して来た人も稀だけど、こんなふうに回復するなんて人もいないよ。実際、驚くべき回復力です。普通では考えられない。軌跡としか言いようがないね。今度こそ、死んだつもりでリハビリして、2度と入院することがないよう生活してくださいね』 って」 私はその医者の言葉を、どこかで聞いたようなぁと思いながら、ほっと胸を撫で下ろした。義弟の回復力が私たちの祈りのためであったのか、それは私にもよくわからない。けれど、私は今回の経験で、祈りというものがエネルギーであることと、それが、本当に届くと言うことを知った。結果がどうであれ、祈りとは実態の無い架空のものなどではなかった。 「はるあきら」の 「祈りをあなどってはならぬ。祈りは聖なるエネルギーぞ」 とい言葉が、今、私にとっての真実として、心に収まっている。
by sadomago
| 2006-06-08 06:44
| 神との対話
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