2006年 01月 20日
LSDを学問的に論じる国際シンポジウム(上):リンク
WIRED
TECHNOLOGY
2006年1月16日 2:00am PT
LSDを学問的に論じる国際シンポジウム(上)
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20060119303.html

Ann Harrison
スイス、バーゼル発――かつて米シスコシステムズ社の社員だったケビン・ハーバート氏(42歳)は、とりわけ難解なプログラミングの問題に直面しているときや、キャリアに関する重要な判断を下そうと熟考しているとき、精神を拡張する強力なツール――『LSD-25』――を使う。





 ハーバート氏はこう語る。「脳の内部の情報伝達に関して、何かが変化するに違いない。問題を解決してくれる内的プロセスがどんなものかはわからないが、ふだんとは違ったはたらきをするのだ。あるいは、脳の別の部分が使われるのかもしれない」。ハーバート氏は、とりわけ困難な技術的問題を解決するときには、グレイトフル・デッドのドラムソロを聴いてトリップしたと話す。LSDからひらめきを得たアーティストは多いが、グレイトフル・デッドもその一例だ。

 「LSDでトリップしているときに、何かしら純粋なリズムを聴くと、別の世界へ連れて行かれ、脳が別の状態になる。そこでは考えることが停止し、知ることが始まる」と語るハーバート氏は、シスコシステムズ社の技術者を対象とした薬物検査を止めさせる運動をしたこともある。

 先週末、カリフォルニア州サンタクルーズ在住のハーバート氏のほか、2000人の研究者、科学者、アーティスト、歴史学者たちがスイスのバーゼルに集まり、1938年にこの地でLSDを発見したスイスの化学者、アルベルト・ホフマン博士(写真)の100歳の誕生日を祝った。ホフマン博士には、誕生日を祝うスイス大統領からの手紙とバラの花束が贈られ、観衆の中から若い女性が進み出て博士にキスをした。

 13日から15日にかけて(現地時間)開催された会議『LSD:問題児にして驚異の薬――アルベルト・ホフマン博士の100歳の誕生日を祝う国際シンポジウム』は、いろいろな意味で、LSDにとって科学的な「カミングアウト」パーティーだった。

 ホフマン博士はシンポジウムの初日、「LSDは私に何かを伝えたがっていた」と聴衆に語った。「LSDは私に、内なる喜び、心を開くこと、感謝の気持ち、広い視野、創造の奇跡に対する内面的な感受性を与えてくれた」

 年のせいで腰が曲がっているものの、今なお饒舌なホフマン博士は、治療目的やスピリチュアルな目的による専門家の監督下でのLSD使用が再び認められるよう、このシンポジウムが後押してくれることを願っていると語った。

 LSD (リゼルギン(リゼルグ)酸ジエチルアミド)――麦角菌が生成する麦角アルカロイドから発見されたリゼルギン酸の合成物――は、1960年代の半ばから世界各国で使用が禁止されているが、現在も何かと物議を醸している。ドラッグ使用に反対するサイエントロジー教会の分派は14日、シンポジウム会場近くにピケを張った。

 精神を拡張するツールとしてのLSDの歴史は、ホフマン博士がLSD-25を発見した5年後から始まった。ホフマン博士いわく、LSDには「奇妙な予感」と呼ぶものが備わっていて、駆り立てられるように再びこの薬を合成したという。そのとき博士は、意図的に摂取したのではないのだが、どうしたわけか、その効果を体験するほどの量のLSDを偶然吸収してしまったという。2回目の意図的なトリップでは恐ろしい経験をしたが、それはしだいに、再び誕生するような感覚に取って代わったと、博士は振り返る。

 1950年代から1960年代にかけて、LSDは精神医学や精神療法の領域で有望なツールとなりうることがわかり、米国の中央情報局(CIA)は強力な自白薬として研究した。だが、実験室から流出したLSDが若者文化によって広く信奉されるようになると、その所持や使用は処罰の対象になった。

 ホフマン博士によると、LSDはこれまで数え切れないほどの人々が摂取してきたが、そのうちの一部の人が、まがいもののLSDを摂取してバッドトリップを経験したのだという。博士は、現代に「エレウシス」を蘇えらせることを望んでいる。エレウシスとは、古代ギリシャの地名で、紀元前1500年から2000年間にわたって秘密の儀式が行なわれていた場所だ。今回のLSDシンポジウムで、神話学者のカール・P・ラック氏と化学者のピーター・ウェブスター氏は、この「エレウシスの密儀」で使われたキケオンという飲料の有効成分が麦角製剤だったと示唆する研究を発表した。

 『エレウシスへの道』(The Road To Eleusis)という著書があるラック氏は「ホフマン博士は、LSDという化学物質を合成したとき、4000年前の秘密も偶然発見していたのだ」と語った。

 ホフマン博士は、1958年にはメキシコの幻覚キノコの一種(psilocybe mexicana)からシロシビン(サイロシビン)とサイロシンという向精神物質を初めて抽出した。世界では、恍惚とした霊的体験に導く目的で、さまざまな植物が使われ、神聖視されているが、この幻覚キノコもその一種だ。

 米国の連邦最高裁判所は現在、宗教団体『ウニアン・ド・ベジェタル』(UDV)のニューメキシコ支部による上告を審理している。UDVは、米国の法律で禁止されている植物、アヤワスカから作った飲み物を儀式に使っており、意識を変容させる宗教儀式の先例としてエレウシスの密儀を引き合いに出している。

 シンポジウムでは、エレクトロニック・トランス・ミュージックの演奏や画家のアレックス・グレイ氏によるサイケデリック・アートが、参加者たち――とくに、変性意識の状態にある人々――の中に瞑想的でスピリチュアルな反応を生み出していた。

 現代版のスピリチュアルなLSD体験を言葉で表現したい参加者は、ウェブサイト『エロウィド』にある薬物の体験談を集めたライブラリーに投稿するよう呼びかけられた。このサイトを運営しているアース・エロウィド氏とファイアー・エロウィド氏はシンポジウムで、寄せられたコメントの例を紹介し、また、LSDに関連づけられている数件の死亡事故について報告した。

 ドイツのケルンからシンポジウムに足を運んだゲリ・バイルさんは、2000年の元日にインドの海辺で経験した、恍惚としたLSD体験を思い出す。「幸福感と、私を創造してくれた両親への感謝に満たされ、私は泣いていた。この体験はずっと消えずに残っている。絶えず私に影響を与えてきた」と、バイルさんは話した。

(1/20に続く)

[日本語版:福井 誠/高森郁哉]
[PR]

by sadomago | 2006-01-20 06:53


<< 量子のからみあう宇宙      x51.org リンク:女性の... >>