2005年 10月 11日
コーマーワーク
アーノルド・ミンデル
昏睡状態の人と対話する―プロセス指向心理学の新たな試み
2002年 5月30日第一刷印刷
日本放送出版協会


コーマーワーク
P120 L7~
 植物状態やトランス状態にとどまったままの人々の多くは、微かな合図やフィードバックをあなたに送って寄こすことで反応するであろう。微かな合図は呼吸のペースの変化や、あなたからのコミュニケーションに結びついた目やロの動きを通して受け取ることができる。
こうした合図はあなたがしていることに対して、クライアントが反応していることを示しているのかもしれない。こうした反応は、あなたがコンタクトを取りつつあるという、喜ばしいポジティブな兆候といえる。
 先日私は、発作の後、完全に麻痺してしまった入院中の八十歳の男性を訪れた。私は彼の呼吸のペースに合わせて、そっとささやきかけるような感じでこう伝えた。「ハンス、今夜あなたと私は大切な体験を共にしようとしています」昏睡状態にあるクライアントのほとんどは、反応するのに最低でも二十分は要する。しかし、この男性の反応はあまりにも急激だったため、私はショックを受けた。彼は即座に目を見開いたのだ。彼は私の目を真正面からじっと見つめ返してきたのだ。私がコミュニケートし続けると、彼は目で合図を送ってくれて、ひとつの経験から次の経験へと私をいざなってくれたのだ。
 トランス状態を展開する次のステップとして「道を開く(finding the way)」ことが必要になる。この時点であなたは自らの意図をあきらかにしなければならない。たとえば次のようなことを伝えるのだ。「私はあなたの呼吸のペースにしたがっています。私は何であれあなたの中で起きていることについていきたいのです。あなたの周りやあなたの内面で生じていることは、大変重要なのです。なぜならそれが私たちにどうやって先に進んだらよいかを示してくれるからです。それが私たちに道を指し示してくれるのです」
 クライアントに対し内的なプロセスが自分たちを導いてくれると告げることで、クライアントにその場で生じていることが大切なことであること、そしてしたがうべき道があることを理解してもらうのだ。またそうすることでクライアントに対し、あなたがその道にしたがうための手助けをするので、その途上で彼がひとりぼっちではないのだという気持ちを伝えることにもなる。そして最後にこのメッセージこそが、彼が自分自身の力で目覚めるように促し、それを可能にするものであることをつけ加えておこう。
 私はクライアントが特定のサインやシグナルにしたがうのを手助けすることによって、「道(way)」に接近することをお勧めしたい。彼が息を吐いた時、次のように言うのもよいだろう。「あなたのすべきことは、起こっていることに気づくことだけです。もし何かが見えるのなら何であれ見ているものを見るのです。感じているものを感じ切るのです。何か聞こえているのなら、聞こえてくるものに聞き入るのです。必要なだけ時間をかけて、見て、聞いて、そして感じるのです」
 このワークの第三ステップにおいては、微かな兆候をピックアップし始める必要がある。この時点になるとクライアントに、反応する時間を与えなければならない。彼に起きている
ことを見、聞き、感じるように伝えながら、次のような微かな手がかりを見守るのである。

 聴覚的な変化:呼吸の速度、深さ、音
 
 動きの変化:痙攣、ぴくぴくした動き、筋肉の反応、表情の変化、顔をしかめる。クライアントが突然ロの端を動かしたり、唇を広げたり、何か考えているようにまゆを同時に動かしたりする場合もある。以上のようなさまざまな動きが刺激に応して持続的に生じた場合、それらを他者に対するコミュニケーションの手段(単なる神経の反射的動きとは異なる)とみなしてもよいかもしれない。
 
 目の変化:目を開くような動き、視線を集中させる、視線を動かす。また目の色合いが変化する場合もある。昏睡状態の患者が目を開いたままで、どんよりとしている場合、彼らは何も見ていない代わりに、何かを感じていたり、聞いていることを示している。

 クライアントが反応したり、あなたがこうした微かな手がかりに気づくまでに多少の時間がかかるかもしれない。クライアントの身体の動きや呼吸にしたがっている際、ただ受け身でいるだけでなく、周囲および自身の内面で何か起きているかを観察することを通して状況にコミットするのだ。あなたは、自分自身の呼吸の変化や体温の変化、さらには、自然に頭に浮かぶファンタジーの内容やイマジネーションの動きに対しても、鋭敏に目覚めた状態になるかもしれない。
 私は以前、交通事故の現場に居合わせた時のことを思い出す。私は重傷を負った男性のそばに座り、救急車を待っていた。私は突然、路上に横たわったままで息絶えた身体から、彼が抜け出そうとしているビジョンを見たのである。その直後、彼は呼吸をしなくなった。私は我を忘れて彼を怒鳴りつけてしまった。「オイ!」私は言った。「今はまだダメだ! 早まるな!」すると波は再び息を吹き返し、一命をとりとめたのである。
 徴かな手がかりに対してあなたがどのような種類の反応を伝えるかというのは、クライアントにとって重要である。あなたからの反応によって絆の存在が明らかになるのである。彼はそのことで自分ひとりではないこと(見つけてもらったこと)を理解するのだ。あなたの対応は、彼が何をしているかに彼自身が自覚的になるための手助けとおなる。それは彼が体験していることについてもっと「伝える」ように促すこととなるのだ。
 プロセスワークがまず試みる対応方法は、「ブランク・アクセス対応」(訳注:ある種の投影法的な関わり)である。それは最も有効な対応方法で、クライアントにさらなるコミュニケーションを促すものである一方、コミュニケーションの内容についての憶測を避けるやり方である。クライアントを知的に理解しようとすることは、十分なサポートが与えられれば自ずとあきらかになるかもしれなかったはずの、当人からの表現方法を禁じてしまうこともあるのだ。
 実は、私たちはきわめて日常的にブランク・アクセスを使用している、瞑想、海や山を眺めること、そして音楽を聴くことでさえもブランク・アクセスなのである。というのも、それらは何であれ必要なものを浮上させるための道を開いてくれるからである。私たちは空白(ブランク)の部分を自分白身の音やイメージやファンタジーで埋めるのである。あらゆるブランク・アクセス・メゾッドは人々の気持ちを穏やかにすると同時にクリエイティブでもあ
る。それらは時間と空問(ブランク)を提供することで、内面にあるものを引き出す手助けをしてくれるからである。言語的なブランク・アクセスは「そう。その通りだとも」、聴覚的なブランク・アクセスは「〈それ〉に耳を傾けてください」というように言うことである。このように刺激的でありながら内容を伴わない言葉はとても助けになる。「内側に目を向けてよく見てごらん」とか「白い壁を見て絵を描いてごらん」といった視覚的なブランク・アクセスは魔法のような効果を現すこともある。
 昏睡状態にある人とワークを行う際、熟のこもった言葉で対応することは大切だが、内容が空白であることが重要である。もしクライアントのまなざしが何かに向けられていたら「ああ、私もそれを見ています!」と言うのもいいだろう。「私を見なさい!」というような
言葉はあまりに直接的であるため、相手が本当に見ているものとは一致しないかもしれない。
「うわあ!」「そう!」「おやまあ!」といった熱がこもっていながら内容を持たない言葉は、クライアントの必要性に応じて解釈される。もしも視線が焦点を持たないままで左右に動いていたら「私にもそれが聞こえます」といった言葉を試してみるのもいいかもしれない。またもし彼が目を閉じリラックスして眠ったように見えたら「何かを感じとることは大切です」とか「静寂は素晴らしいですね」と言ってみてもいいかもしれない。何かを言うたびに、手のタッチを静かに変化させることで手からも同じメッセージを伝えることを忘れないように
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by sadomago | 2005-10-11 08:05 | プロセスワーク


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