2009年 06月 12日
シエラレオネ
落合雄彦研究室
http://www.law.ryukoku.ac.jp/~ochiai/
龍谷大学社会科学研究所共同研究
「アフリカン・イニシアティブとその展望」

http://www.law.ryukoku.ac.jp/~ochiai/shaken.htm


●2003年度
7月5日  13:00 第2回研究会 第2共同研究室 
落合雄彦氏(龍谷大学)
「シエラレオネ紛争における民間人への暴力の解剖学──国家、社会、精神性──」(レジュメ)
http://www.law.ryukoku.ac.jp/~ochiai/ochiai.pdf



シエラレオネ紛争において民間人に暴力を加えた反政府勢力兵士の心性は、実は、こうした普通の人々を「システム」と同様に敵視するラスタの心性となんらかの形で通底していたのかもしれない。
「システム」概念に代表されるラスタの反体制思想は、レゲエ音楽という媒体を通して独立後のシエラレオネに伝えられ、 都市部を中心に若者を魅了するようになった。
しかし、本発表は、ジャマイカからシエラレオネにレゲエ音楽を通じて伝えられたラスタの反体制思想が、RUF 兵士の思考様式に直接的な影響を与えていたとか、それが民間人への残虐な暴力の主要な原因となっていたとかと主張するものではまったくない。
 本発表は、「ジャマイカのラスタの心性」と「シエラレオネの反政府兵士の心性」が直接的な「因果の関係」にあったと主張するものではなく、むしろ、その主張とは、両者が間接的な「共振の関係」にあったのではないか、という点にある。ここでいう「共振の関係」とは、離れた位置にある2つの物体──つまり、直接的には接触していない2つの物体──がなんらかの構成要素を共有しているがゆえに、第3者の外部刺激に対して固有の振動を共にみせるような関係として一応位置づけておきたい。そして、本稿の仮説とは、「ジャマイカのラスタの心性」と「シエラレオネの反政府兵士の心性」が直接的な「因果の関係」にはないものの、なんらかの相似性をもつ「共振の関係」にあったのではないか、というものである。
 シエラレオネの反政府勢力兵士は、民間人を単に「弱者」としてだけではなく、ラスタと同様、「システム」に協力する「裏切り者」あるいは「敵対者」とみなし、憎悪していたのであろう。だからこそ、彼らは、民間人に対して、単に物質的あるいは性的な欲求充足のための暴力だけではなく、 四肢切断のような残忍な暴力を広範かつシステマティックに加えたのではなかろうか。民間人は、「弱者」としてRUF兵士による暴力の単なる「餌食」にされていただけではなく、「システム」に準じる「敵対者」としてその直接な「攻撃目標」とされていた。それゆえに、同紛争では、民間人に対する残虐な暴力行為が、かくも広範かつ組織的に展開されたのではなかろうか。

5.むすびに──複数形の紛争、複数形の暴力──
シエラレオネ紛争とは、必ずしも「単数形の紛争」 (a conflict)ではなく、エリートに主導された国家権力闘争や疎外された若者の叛乱であると同時に、中央と地方の専制的な支配様式への二面戦争でもあり、さらには、 「システム」とそれに追従する一般市民への全面戦争でもあるという、いわば重層的な意味合いをもつものであったのかもしれない。そして、もし、西アフリカの小国シエラレオネで約 11 年間にわたって展開された武力紛争が、実はそうした様々なレベルや意味合いの闘争から成る 「複数形の紛争」 (conflicts) であったとするならば、そこで展開された一般市民への残虐な暴力の原因を、本発表で考察してきた諸アプローチのいずれかひとつだけに依拠して完全に解明することは、おそらく不可能であろう。 「複数形の紛争」は、必然的に「複数形の暴力」を孕むものであり、そうした暴力の分析には、諸アプローチの複眼的な活用が不可欠であるに違いない。
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by sadomago | 2009-06-12 15:29 | とりあえずノンジャンル


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